12 KiB
sidebar_position, title, description, hide_table_of_contents, displayed_sidebar, image
| sidebar_position | title | description | hide_table_of_contents | displayed_sidebar | image |
|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 自宅ネットワークにIDSを導入した話 — Proxmox LXC で Suricata + ntopng | Proxmox VE の LXC コンテナで Suricata と ntopng を使った自宅ネットワーク監視環境を構築した記録。TEEミラーリング、カスタムルール、Zabbix連携まで。 | false | null | ./banner.png |
自宅ネットワークにIDSを導入した話
きっかけ
自宅サーバーを運用してると、外向きのサービスも増えてくるし、IoTデバイスも増える。リバースプロキシの裏で何が起きてるか、正直あんまり把握できてなかった。
最近 OpenClaw(AIアシスタント基盤)を自宅で動かし始めて、外部APIとの通信も増えてきた。「そろそろネットワークの中身ちゃんと見ないとまずいかも」と思って、とりあえずやってみることにした。
構成
うちの環境は Proxmox VE でクラスタを組んでて、サービスは基本 LXC コンテナで動かしてる。専用のミラーリングスイッチとかは持ってないから、Proxmox の機能でなんとかする方針。
最終的な構成図
インターネット
│
├─ Nginx Proxy Manager (LXC, 192.168.1.189)
│ │
│ ├─ 各種サービス (Gitea, Docusaurus, etc.)
│ │
│ └─ [TEE mirror] ──→ Suricata + ntopng (LXC, 192.168.1.187)
│ │
│ ├─ eth0: サービスネットワーク (192.168.1.0/24)
│ └─ eth10: データプレーン (192.168.10.0/24)
│
├─ Proxmox VE ノード x4
│ └─ [TEE mirror] ──→ (同上)
│
└─ Zabbix (LXC, 192.168.1.172)
└─ Suricata アラート監視
使ったもの
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| Suricata 6.0.4 | IDS(侵入検知) |
| ntopng Community | トラフィック可視化・フロー分析 |
| Zabbix 7.4 | アラート集約・通知 |
| Proxmox TEE | パケットミラーリング |
LXC コンテナの作成
Proxmox の Web UI から Ubuntu 22.04 の LXC を作成。ポイントはいくつかある。
スペック
- CPU: 2コア
- メモリ: 4GB(Suricata のルール読み込みで結構食う)
- ディスク: 20GB
- NIC: 2つ(サービス用 + データプレーン用)
特権コンテナにすること(重要)
最初は非特権コンテナで作ったんだけど、Suricata の af-packet(パケットキャプチャ)が動かない。ルールの読み込みまでは成功するのに、キャプチャスレッドが起動しない。
ログにはこう出る:
48714 rules successfully loaded, 0 rules failed
48719 signatures processed.
でも All AFP capture threads are running. が出ない。eve.json も更新されない。
原因は af-packet のプロミスキャスモードに必要な権限が非特権コンテナだと制限されるから。
# /etc/pve/lxc/<CTID>.conf
# unprivileged: 1 ← これを削除
特権コンテナにしたら一発で動いた。
NIC 設定
net0: name=eth0,bridge=vmbr0,ip=dhcp,type=veth
net1: name=eth10,bridge=vmbr1,ip=192.168.10.187/24,type=veth
eth0: 管理・サービス用(192.168.1.0/24)eth10: TEE ミラートラフィック受信用(192.168.10.0/24)
ゲートウェイの設定を忘れずに。 DHCPじゃない場合、gw=192.168.1.1 を net0 に追加しないと外部に出られない(パッケージインストールで詰む)。
Suricata のインストールと設定
sudo apt update
sudo apt install -y suricata suricata-update
sudo suricata-update
suricata.yaml の設定ポイント
HOME_NET
HOME_NET: "[192.168.1.0/24]"
HTTP_PORTS を拡張する
デフォルトだと HTTP_PORTS: "80" だけ。自宅サーバーは 8006(Proxmox)、3000(ntopng/Grafana)、8080(Zabbix)とか色んなポートで HTTP 使ってるから、これを広げないと HTTP の中身をパースしてくれない。
HTTP_PORTS: "[80,443,3000,3128,8006,8007,8080,8443,9876]"
これに気づくまでかなりハマった。カスタムルールが全然発火しなくて、ログを見たら HTTP イベント自体が記録されてなかった。
ルールファイル
rule-files:
- suricata.rules
- local.rules
suricata-update で取得したルールは /var/lib/suricata/rules/suricata.rules に保存される。/etc/suricata/rules/ にシンボリックリンクを作っておくと楽。
sudo ln -s /var/lib/suricata/rules/suricata.rules /etc/suricata/rules/suricata.rules
カスタムルールの作成
ET Open のルールセットだけだと、よくある Web 探索行為(.env を探すボットとか)は検知できない。自分で書く。
# === 探索行為の検知 ===
alert http any any -> $HOME_NET any (msg:"Scan: wp-admin access"; content:"/wp-admin"; http_uri; sid:2000001; rev:1;)
alert http any any -> $HOME_NET any (msg:"Scan: .env access"; content:"/.env"; http_uri; sid:2000002; rev:1;)
alert http any any -> $HOME_NET any (msg:"Scan: phpmyadmin access"; content:"/phpmyadmin"; nocase; http_uri; sid:2000003; rev:1;)
alert http any any -> $HOME_NET any (msg:"Scan: xmlrpc access"; content:"/xmlrpc.php"; http_uri; sid:2000004; rev:1;)
alert http any any -> $HOME_NET any (msg:"Scan: .git directory access"; content:"/.git/"; http_uri; sid:2000005; rev:1;)
alert http any any -> $HOME_NET any (msg:"Scan: admin panel probe"; content:"/admin"; http_uri; sid:2000009; rev:1;)
# === SQLインジェクション試行 ===
alert http any any -> $HOME_NET any (msg:"SQLi: UNION SELECT attempt"; content:"UNION"; nocase; http_uri; content:"SELECT"; nocase; http_uri; sid:2000011; rev:1;)
# === ディレクトリトラバーサル ===
alert http any any -> $HOME_NET any (msg:"Traversal: ../ attempt"; content:"../"; http_uri; sid:2000013; rev:1;)
# === ブルートフォース ===
alert http any any -> $HOME_NET any (msg:"Brute: login page flood"; content:"/login"; http_uri; threshold:type both, track by_src, count 20, seconds 60; sid:2000014; rev:1;)
テストは curl で簡単にできる:
curl -s http://192.168.1.187:3000/.env
# → eve.json に "Scan: .env access" のアラートが記録される
TEE によるパケットミラーリング
専用のミラーリングスイッチがなくても、Proxmox ホスト上で iptables の TEE ターゲットを使えばパケットをコピーできる。
# サービスネットワーク経由のトラフィックをデータプレーンにミラー
iptables -t mangle -A PREROUTING -i vmbr0 -j TEE --gateway 192.168.10.187
iptables -t mangle -A POSTROUTING -o vmbr0 -j TEE --gateway 192.168.10.187
データプレーン(vmbr1, 192.168.10.0/24)を別に用意してるのは、ミラートラフィックでサービス帯域を圧迫しないため。
ntopng でトラフィック可視化
ntopng は Web UI でリアルタイムのトラフィック状況が見れる。Community 版でも十分使える。
sudo apt install -y ntopng
設定ファイル:
-i=eth0
-w=3000
-m=192.168.1.0/24
API でホストラベルを設定
ntopng の REST API でホストにわかりやすい名前をつけられる:
curl -X POST -H "Authorization: Token <API_TOKEN>" \
"http://localhost:3000/lua/rest/v2/set/host/alias.lua" \
-d "host=192.168.1.7&custom_name=db975i"
アラートフローの確認
curl -H "Authorization: Token <API_TOKEN>" \
"http://localhost:3000/lua/rest/v2/get/flow/active.lua?ifid=2&alert_type=1"
:::warning ntopng の Suricata 連携は Enterprise 版のみ Community 版では ntopng 上で Suricata のアラートを直接表示できない。Zabbix 等の別ツールで集約する必要がある。 :::
Zabbix 連携
Suricata のアラートを Zabbix で監視・通知する。
Zabbix Agent2 のインストール
wget -O /tmp/zabbix-release.deb \
https://repo.zabbix.com/zabbix/7.4/release/ubuntu/pool/main/z/zabbix-release/zabbix-release_latest_7.4+ubuntu22.04_all.deb
sudo dpkg -i /tmp/zabbix-release.deb
sudo apt update && sudo apt install -y zabbix-agent2
eve.json パーススクリプト
Zabbix の log[] アイテムだと JSON のフィルタが難しいので、UserParameter + スクリプトで対応。
#!/bin/bash
MODE=${1:-count}
SECONDS_AGO=${2:-60}
CUTOFF=$(date -u -d "-${SECONDS_AGO} seconds" +%Y-%m-%dT%H:%M:%S)
case $MODE in
count)
grep '"event_type":"alert"' /var/log/suricata/eve.json | \
awk -F'"timestamp":"' '{print $2}' | cut -d'"' -f1 | \
awk -v c="$CUTOFF" '$0 >= c' | wc -l ;;
custom_count)
grep 'signature_id.*200000' /var/log/suricata/eve.json | \
awk -F'"timestamp":"' '{print $2}' | cut -d'"' -f1 | \
awk -v c="$CUTOFF" '$0 >= c' | wc -l ;;
last)
grep '"event_type":"alert"' /var/log/suricata/eve.json | tail -1 ;;
esac
監視アイテムとトリガー
| アイテム | 種別 | 間隔 |
|---|---|---|
| 全アラート数 (60s) | 数値 | 30秒 |
| カスタムルール数 (60s) | 数値 | 30秒 |
| 個別アラートログ | ログ | 10秒 |
トリガーはカスタムルール検知で「警告」、大量アラート(100件/分超)で「重大」に設定。
やってみてわかったこと
ハマりポイント
- 非特権 LXC だと af-packet が動かない — 特権コンテナ必須
- HTTP_PORTS がデフォルト 80 のみ — 自宅サーバーのポートを追加しないと HTTP パースされない
- LXC のゲートウェイ設定漏れ — パッケージインストール時に外に出られなくて詰む
- suricata.rules のパス —
suricata-updateは/var/lib/に保存するが、設定は/etc/suricata/rules/を見る
実際に検知されたもの
初回スキャンで検知されたのは:
- Corosync (UDP:5405) のクラスタ通信
- Proxmox UI (8006/8007) のアクセス
- MDNS、SMB、SSH のプロトコル異常
- Tuya IoT デバイスの通信
セキュリティ上の脅威はゼロだった。 自宅ネットワークなので当たり前といえば当たり前だけど、「異常がない」ことを確認できるのが大事。
Postfix がデフォルトで開いてる問題
Proxmox VE ノードの脆弱性スキャンをしたら、全ノードで SMTP (25/tcp) が外部から到達可能だった。Proxmox はデフォルトで Postfix を入れてる(通知メール用)けど、ローカルのみにリッスンを制限すべき:
sudo postconf -e 'inet_interfaces = loopback-only'
sudo systemctl restart postfix
まとめ
専用機材なしでも、Proxmox の LXC + TEE ミラーリングで実用的な IDS 環境が作れた。月額コストもゼロ。
「何が起きてるかわからない」状態から「異常があれば検知して通知される」状態になっただけで、だいぶ安心感が違う。自宅サーバー勢にはおすすめ。
参考リンク
この記事は2026年2月時点の情報です。